【連載】ヨガと日常をつなぐ1冊 Vol.2 メメントモリ 死を思うこと

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2018.8.31 text by:Makoto

【連載】ヨガと日常をつなぐ1冊 Vol.2 メメントモリ 死を思うこと

ヨガをすることがポピュラーなことになった今、その教えを日常に取り入れたいと考えている方も多いでしょう。専門書を手に取るのもいいですが、書店に並ぶ本の中にもヨガのエッセンスが詰まったものがあります。そこでヨガスクールの講師としてインストラクターを養成している筆者が、ヨガの教えをより身近に感じてもらえる1冊をご紹介します。第2回は「今をどう生きるか」をテーマにしたノンフィクションです。

“死”を通していかに生きるかを学ぶ

「いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる」
「死ぬっていうのはね 、悲しいことの一つにすぎないんだよ 。不幸な生き方をするのはまた別のことだ」
モリー・シュワルツ(社会学者 作家)

『モリー先生との火曜日』と題されたこの本は、社会学の学者であり、米国のブランダイス大学のモリー・シュワルツ教授が、難病である筋萎縮性側索硬化症(ALS)という神経疾患に侵され、死に直面しながらも、類まれな精神性の高さを持ち続け、人々に勇気を与え続けた真の教師としての生き方を綴ったノンフィクション作品です。

モリー先生の病気が発症した後、難病を背負いながらも、真摯な態度で人生を俯瞰する彼の姿を捉えたインタビュー番組を、元教え子でジャーナリストのミッチ・アルボム氏がたまたま見ていたことから、2人は再会を果たします。彼はモリー先生の授業で毎週火曜日にキャンパスで会っていたように、今度は病床に伏せる先生の自宅に毎週火曜、先生が亡くなるまでの間、全部で14回の訪問を果たしました。そして2人は、人生最後の講義を記録することを決意します。そこには“今世の人生をいかにして生きるか”を大きなテーマにし、「世界の現象」「文化」「愛」「感情」「欲望」「恐怖」など宗教や哲学が扱う難しい内容について、モリー先生のシンプルでわかりやすく、また知性や洞察力に溢れた言葉が綴られています。

互いに学び、教えあう

モリー先生の「死」を前提とした2人の再会でしたが、ミッチ氏が大学を卒業して数十年が過ぎ去り、時は2人を確実に変化させていました。売れっ子のスポーツジャーナリストとして、人から見たら欲しいものを全て手に入れたように見えるミッチ氏ですが、実は彼の心は空虚で乾いていたのです。

そして、ミッチ氏は先生との切ない再会を味わいながらも、かつてのように良き生徒でない自分に後ろめたさを感じてさえいました。
毎週火曜日に彼らは会い、そして人生の意味を再度考察していきます。先生と生徒という関係性ですが、多くの教師がそうであるように、モリー先生もまた、教えるということで自らが人生の真意を学んでいたのではないでしょうか。またミッチ氏も先生の教えに触れることによって、みずみずしい感性を取り戻し、心を潤していくのです。

私たちに与えられた“使命”とは?

私がヨガインストラクターになるための勉強を始めた頃に、尊敬していたヨガの先生からレッスンを受けていたことがあります。呼吸を繊細に感じ取り、ポーズからポーズへ繋ぐムーブメントには、感受性豊かで詩的な表現の言葉が連なり、それがまるで音楽のようなリズム感を生む不思議な心地良さに溢れたヨガのクラスを毎週火曜日に受けていました。ヨガ的な考え方を身につけたいと、難解なヨガ哲学の解説書を傍に抱え、理解に苦しんでいた頃にその先生から勧められたのがこの『モリー先生との火曜日』でした。

“死”を思うことについてモリー先生は次のように語っています。

「みんなまるで夢遊病者なんだな。われわれはこの世界のことを十分に体験していない。それは半分寝ているから。やらなければいけないと思っていることを無反省にやっているだけだから」
「よけいなものをはぎとって、かんじんなものに注意を集中するようになる。いずれ死ぬことを認識すれば、あらゆることについて見方ががらっとかわるよ」

人は誰しも生きる意味を求めていると思います。そして、誰しもが使命を持って、この時代、この場所に“命”を授かったのだと、私は信じています。もし人々が自分の使命を本当の意味で理解したのなら、私たちの態度や振る舞いはどのように変わるのでしょうか?

私がまだ若い頃は、時間やエネルギーが無限にあるように感じていました。しかし肉体には制限があるけれども、意識は無限に広げることが可能であるとを理解している今、限りある時間の中で自分の使命を全うしたいと強く思うのです。

この世界を旅立っても“生きた証し”は残る

一方で、私は自分自身が肉体を去ったら、この人生で出逢った人たち、つまり家族や友人やパートナーを愛した証しはどこへいくのか?と、長い間どのように理解したらよいのかと考えていました。また、私の死後、親しかった人々にいつしか忘れ去られるのでは?と心配していました。このような疑問や不安にもモリー先生は答えてくれています。

「愛とは死んだあとも生きてとどまるもの」

肉体を離れて、物質としてこの世界を去ったとしても、愛が記憶や意識としてこの大きな宇宙の片隅に記録されるのならば、それは素晴らしいことだと私は思い、安心することができました。

死を見据えるために
「今日が最後の日か?」
「用意はできているか?」
「すべきことはすべてしているか?」
「なりたいと思う人間になっているか?」
とマントラのように唱えると良いとモリー先生は言います。
もし私が人生最後の日を告げられたとしても、満足であったと自分の人生を振り返ることができるように、そして残りの時間を大切な人と幸福に生きられるように、心を磨いていきたいと思います。

ミッチ・アルボム(著) 別宮貞徳(翻訳)『モリー先生との火曜日』 2004年 NHK出版 1026円(税込)

ライタープロフィール:Makoto

FIRSTSHIP講師、スタジオディレクター。呼吸法、アライメントを重視したフロースタイルのハタヨガを得意とする。ヨガの国際資格E-RYT500保持。ヨガやアーユルヴェーダ、哲学的なライフスタイル、そして生き方を幅広く提案している。

http://www.firstship.net/

makoto(ライター用)

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ヨガインストラクター資格取得 Firstship

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